患者さんを寝たきりにさせない環境。それには、まず「離床環境」を整える必要がありました。
そのとき、シーティングの重要性を知りました。
施設名 | 社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 様 |
製品 | 床ずれ予防クッション:ロホクッションROHO® |
所在地 | 長野県松本市 |
患者さん本人が望む生活に戻るためには、急性期段階でのできるだけ早期の離床が重要になります。これが遅れると、廃用症候群・昼夜逆転・夜間せん妄といった様々な問題につながります。
とはいえ、ただやみくもに車いすに座ればよいというものでもありません。不適切な姿勢で座り続けると、疼痛や床ずれ、拘縮、誤嚥、転落等といった弊害が生じます。
相澤病院では、これらを予防しつつ、適切な離床環境を提供したいという願いから、「シーティングマスター」の院内資格制度をつくりました。
「離床支援プロジェクト」の始動
そもそも、院内での離床環境を整える必要性を考えるようになったのは、JCI(*1)認証取得に向けた活動をしていたときの、ある出来事がきっかけでした。JCI の予備審査員が院内を視察したとき、スタッフステーションで患者さんを離床させることを「Very funny!!」(不可思議だ)と評したのです。私たちの感覚では、患者さんを看護師の目が届く安全な場所で「見守っている」という認識だったのですが、確かに、スタッフステーションは患者さんにとって日中を楽しくお過ごしいただける場所ではないな、と、そのとき気付いたのです。 そこで、院長の指導のもと「離床支援プロジェクトチーム」が発足、患者さんの離 床環境の整備に本格的に着手しました。
* 1 JCIとは、国際的な病院評価認定であり、患者の安全追求と医療改善を具現化すべく、専門審査員が中立の立場で多角的に審査・評価します。
「シーティングマスター」院内資格制度(* 2)をつくる
ちょうどそのころ、アビリティーズさんから「シーティングの勉強会をしませんか」とお誘いがありました。その勉強会では、様々な身体状況の方がシーティングにより見違えるほど姿勢がよくなり、QOLも向上した事例が報告されました。そして、アビリティーズのリハビリ施設では、専属のスタッフ(シーティングマスター)がPT と連携して、定期的にシーティングを行っている、と。
「車いす離床を進める以上、うちでも必要なことじゃないか」―そう思ったのです。そこで、アビリティーズさんに協力してもらいながら、相澤病院版の「シーティングマスター院内資格制度」づくりに着手しました。プロジェクトの先陣を切る先遣隊として、まずシーティングマスターの育成が必要と考えたからです。
基礎講座、実技講習、実際の患者さんをモデルにしての臨床実習、そして筆記・実技試験を経て、第1 期のメンバー(看護師、PT、OT、介護福祉士 計19 名)が認定されました。
シーティングマスターの活動
「シーティングマスター」は、セラピスト・看護師・介護福祉士の混合編成によるチームで、月4 回、決まった曜日に院内をラウンドしています。
当院は各病棟に「院内デイサービス」があるのですが、患者さんはできるだけ日中はここに来ていただき、レクリエーションを楽しみながら車いす離床をしていただくことにしています。そのため、デイサービスの介護福祉士にもメンバーに加わってもらいました。
ラウンドでは、車いすの患者さんを見かけ次第、専用の「シーティング・チェックシート」の項目に記入していきます。チェック内容は、現在座っている車いす・クッションの評価、離床している時間や場所の確認など、多岐に渡ります。 まだ始動して間もないですが、プロジェクトチームが活動し始めて、褥瘡が悪化する患者さんが減ったと実感しています。
シーティングマスターの活動も院内で少しずつ認知されてきて、病棟から依頼がかかるようになりましたし、「抑制や転倒の件数が減った」といった報告が上がってきており、メンバーのモチベーションも上がっています。
クッションの選定
現在、離床時の床ずれ予防クッションとしてロホ モザイククッション:ROHO® MOSAIC® を使っています。各種クッションを体圧測定装置「X センサー」で実際に測って比較した結果、除圧効果が優れていたからです。さらに、今後は姿勢保持機能の高いタイプ(クァドトロセレクト:ROHO® QUADTRO SELECT®)もそろえていく必要があると考えています。標準型車いすにタオルを使ってシーティングするテクニックも教わりましたが、やはりどうしても限界があります。 円背で流涎(りゅうぜん)がある患者さんに対し、モジュール型車いすとロホクッションで調整すると、目線が上がり、表情がはっきりと変わります。笑顔で話し始めたりする様子を見ると、「この方にとって世界が広がったんだな」と、感動すら覚えますね(笑)。
情報を共有し、「チーム医療」に活かす
最近、「チーム医療」という言葉に注目が集まっていますが、私たちもラウンドを通じてその必要性を感じています。たとえば、あるチームで解決法が見出せない問題でも、別のチームから良い対処法やアイデアが出てくることがあります。 また、「院内連携の円滑化・活性化」という効果もあります。ラウンド中、スタッフステーションにいる患者さんを見つけると、メンバーがその場で院内デイサービスに連絡し、受け入れを調整します。つまり、シーティングマスターのメンバーが両者を結ぶ「橋渡し」のような役割を担っているのです。 当院のように、急性期病院でプロジェクトチームを立ち上げてシーティングに取り組んでいるところはまだ全国的にも珍しいと聞きましたが、適切な離床環境を整えるには、シーティングの知識を持ったスタッフが介入して多職種で連携することが不可欠で、シーティングマスターの存在は大きいと思っています。
これからの役割
この内容は、2015年9月発行 「リハビリ・介護機器 -病院・福祉施設向- 2015雑誌第2版 アビリティーズ・ケアネット(株)」に掲載された、2013年11月から2014年1月の間に行なわれたインタビュー記事です。
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