せっかく取り付けたリフトをわざわざ取り外す施設の話を聞くと残念でなりません。私たちのグループ全介護施設では、無理に持ち上げない介護に取り組んでいます。

社会福祉法人立による施設として、昭和45年4月1日に開設。西宮の皆様と共に歩まれ、 普遍的・恒久的理念のもと、今後も時代の流れと期待に応えるべく、取り組んでおられています。

施設名 社会福祉法人甲山福祉センター
特別養護老人ホーム甲寿園 様 
製品 天井走行リフト:GH3
所在地 兵庫県西宮市
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問題点

 リフトの導入前は、介護技術を高めることで安楽な移乗を目指していました。一人でできなければ二人での介助で対応していました。二人と聞くと、より安全で、手厚く良い様にも思えますが、二人介助は息を合わせることが難しいのです。また、ご利用者とのコミュニケーションも、1対1より取り辛く、スムーズではなくなります。加えて、当時の最大の問題は、職員の腰痛・ぎっくり腰の発症で、職員の80%近くが腰痛の問題を抱えて、元気な職員がほとんどいないような状況でした。

発想の転換

天井走行リフト:GH3 設置事例

 まず、このような状況から脱却するために、それまでの常識(良質の介助= アンチマシン)から発想転換をして、リフトを機械ではなく手段だと考えました。リフトに任せるか否かでなく、介助の中心はあくまで自分たち人間だと考えたのです。リフト使用時にはご利用者の身体に手を添えること、必要なときにはご利用者を支えること、ご利用者に常に声をかけ、ご利用者と私たちのコミュニケーション向上を図ること…。こうした発想の転換により、ご利用者が安心して移乗を受けられる環境づくりと職員の腰痛問題を同時に解決できたのです。

導入と労働環境の改善

導入と労働環境の改善

 まず、床走行式リフトの導入から始まりましたが、当初マンパワーで介助できると、腕力のある男性職員がリフト使用への抵抗を示したこともあったようです。その中でも床走行式リフトの使用頻度や範囲を拡げていき、2001年の南館全面改築の際に天井走行式リフトを導入しました。私たちの法人には「西宮すなご医療福祉センター」もあり、そこでリフトを積極的に活用していたことも導入成功の背景にありました。

 2009年には介護労働者設備等整備モデル奨励金を活用し、リフト導入と使用環境の整備を行ない、一人介助でも起居・生活の場、入浴やトイレなど、可能な限り、ご利用者の移乗介助ができるようになりました。

労働環境の現状

天井走行リフト:GH3 設置事例

 現在、セカンドライフで初めて介護職を経験する50歳以上のパートさんが多く勤めるようになりました。もちろん体力のピークは過ぎていますので、リフトの使い方を習得することで、腰痛やぎっくり腰を予防しながら働いています。中には70歳代の方もいますが、リフトがあるから働き続けられていると言っています。

 こういった職場環境であってもリフト介助の整備の結果、

  • 介護職員の腰痛問題がなくなり、急な介護職員の不足や離職が発生しづらく、安定した運営体質が確立した。
  • 介護職員の経験や体力の差を感じさせない効果があった。
  • ご利用者が抱きかかえ時の表皮剥離の心配なく介助を受けられるという良い効果が現れた。

 また、ご利用者の生活の維持向上のためにも24時間いつでも使えるリフト介助は必要不可欠です。日中は30名ほどの職員体制が可能ですが、深夜の職員数は少数になります。時間によっては仮眠を取る時間帯もあります。リフトの導入により、深夜トイレ誘導が必要な方に対しては職員一人で移乗介助が行えています。

 リフトは利用者にとっても介助者にとっても本当に良いものですが、その一方で、マンパワーの方が短時間にできることもあります。限られた時間か安全かといったせめぎ合いは、悩ましいところですが、安心・安全な移乗を優先に考えています。

 現在、当園全床の約70%がリフトの使用が可能です。できれば全床と考えているので、今後も継続して導入を考えています。また、当園内に限らず当法人の全介護施設にて天井走行リフトを使用しており、無理な持ち上げをしない介護に取り組んでいます。

将来

 現在、介助ロボットの開発が進んでいるといった話も耳にする時代になりました。様々な想いを持つご利用者を始めとして、私たち使用する者、機器の開発に携わる者が、安心して活用するための配慮、心遣い、発想のもとに、人にやさしい機械を一緒になって作り上げられたらと思います。

 将来、私たちがロボットを使う機会がきても、リフト同様機械任せではなく、心をこめてご利用者に対応していきます。

甲山福祉センター理事、特別養護老人ホーム甲寿園、施設長 狭間 孝氏

甲山福祉センター理事、特別養護老人ホーム甲寿園、施設長

狭間 孝氏

特別養護老人ホーム 甲寿園、副施設長、介護福祉士、介護支援専門員 中野 由理氏

特別養護老人ホーム甲寿園、副施設長、介護福祉士、介護支援専門員

中野 由理氏

この内容は、2013年11月から2014年1月の間に行なわれたインタビュー記事です。

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