【 京王プラザホテル:客室担当・中村様(左)、広報担当・杉浦様(右)、当協会会長・伊東(中央) 】
1971年、西新宿に日本初の超高層ホテルとしてオープンした京王プラザホテルは、現在ユニバーサルルームを13室設け、ハード面の整備を拡充しているだけでなく、東京都の「心のバリアフリー好事例企業」に認定されるなど、ハード・ソフト両面でのユニバーサルサービスの推進を、業界内でも先駆けて行っています。
障害者差別解消法が改正され、2024年4月からは民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されます。この対応に追われている事業者も多い中、同ホテルでは、1988年からユニバーサルルームを設け、障害のあるお客様にもご利用いただける取り組みを進めていらっしゃいます。
客室担当・中村さおり様と広報担当・杉浦陽子様に、当協会会長・伊東弘泰がお話を伺いました。(文中敬称略)
お伺いした内容
業界におけるユニバーサル化の先陣
2013年に開催された全国障害者スポーツ東京大会では、アビリティーズがアスリートの宿泊先に福祉用具を納入・貸与する業務を担当させていただきましたが、その際もたいへん協力的にご対応いただきました。御社は、創業当時から先進的なところがおありですね。
今でこそあたり前に「多様」という言葉が使われていますが、当時としては斬新だったと思います。出入口をたくさん設け、あちらからもこちらからも出入りでき、人々が集まりやすい「広場」にしようという発想でした。
ホテルにはこのような方がこれからも大勢いらっしゃる、車いすに限らず、視覚聴覚や他の障害の方もいる、いろいろな障害の方のことを考えていこう、ということになりました。この改装した客室は、健常者が利用しても違和感がなく、専用の客室として販売制御をかけなくて良い点も特長の一つです。
*注1 第16回リハビリテーション世界会議
1988年9月5日~9日に、京王プラザホテルを会場として開催された、アジア地域初のリハビリテーションに関する世界会議。参加者は93か国、2,807名にのぼった。
さまざまなお客様に安心してご利用いただきたい
羽毛アレルギーの方なども多いので、枕やソファーに置いてあるクッションなども交換しています。他にも目に見えない障害やご苦労をお持ちの方も多く、東京という大都会にはいろいろな方がいらっしゃり、求められることもたくさんあると感じています。
そうやって分かったことがあれば対応していく。他のスタッフも「このクッションの中身は何だろう」ということを考えるようになる。このような変化がよいことだと思います。それが少しずつ重なって、ユニバーサルサービスの伝統になっていき、もっとよいものができるのだと思っています。
今、当ホテルの従業員は、お手伝いが必要な方がたまたま車いす利用の方だったというくらいの感覚でいます。障害のある方という括りではなく、お手伝いが必要なひとりの方なのです。どのお客様も、初めてのホテルでは、例えばトイレの場所などご存知ではありません。そのご案内をするのと同じことなんですね。
日本は分離教育で、障害のある方と接する機会が少ないため、一緒にいれば自然に身につくことも、学ばなければ習得できないという背景があります。
一方で、障害のある人が“このようなことで困っている”とうまく伝えられないのは、ホテルでの滞在に慣れていないからともいえます。お客様から要望を伝えることも大切ですね。
常に両面からのサービス提供を
実は私は、今あの部屋があることでスタッフが安心してしまっているのではないかと不安なのです。「車いすの方は、あの部屋に案内すればいい」と決めつけてしまわないかと。すごくいい部屋ですし、活かしたいのはもちろんですが、そういう考え方になってしまうのは少し怖いです。本当は、全室がユニバーサルであればいいですが、すぐには難しいですので、ソフト面でのサービスも常に提供できる状態でいたいです。
国内で、オリンピック・パラリンピックに向けて高まっていた機運が、いま少し止まってしまっているような気がします。業界全体でさらに進めていければと思います。
ホテルはいろいろな方が利用されるところです。高齢者・障害のある方が使いやすく、かつホテルらしさも必要。私たちはこれからも、自分たちのホテルカラーを失わずに、皆様に快適にお過ごしいただけるような「場所」を作っていきたいと思います。
開業当時から掲げている、設備(ハード)と人(ソフト)の両面でのおもてなし、ユニバーサルサービスの提供に努めていきたいと思います。
京王プラザホテルさんには、これからもいろいろな方が気軽に立ち寄れるホテルとして、ご発展を期待しています。
京王プラザホテル ユニバーサルルームのご紹介
ユニバーサルルームは、本館30階に13室(3タイプ)あります。また、ご希望に応じて、貸出し可能な備品・器具もあります。
デラックス・ツインルーム(35.5㎡)
他に、客室面積がより広い「ジュニアスイート」「ラグジュアリーデラックス」もあります。
調節・着脱ができる、トイレの手すり
水回り製品のデンマークのトップメーカー・プレサリット社の「マルチトラックシリーズ 」が導入されています。
【 必要な時に手すりや背もたれを取り付け 】
【 取り外した様子 】
貸出備品 一部を除き、ユニバーサルルーム以外でも使用できます
バスボード、バスグリップ(バスタブ用手すり)、バスステップ(踏み台)、シャワーチェアなど。他にも、車いすや滑り止めマット、背もたれクッションなどもあります。
共有スペースにもさまざまな配慮
・30階のエレベーターホールに、音声標識ガイドシステム導入
・宴会場に磁気ループシステム設置
・補助犬専用のトイレ設置 など
※同ホテルのユニバーサルルームは、国土交通省のバリアフリーガイドライン(高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準)にも掲載されています。
関連情報
ユニバーサルルームなどの詳細は下よりご覧いただけます。
*本⽂書に記載している情報は、発表⽇時点のものです。
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