建築年数の古い建物の多くは、最新のバリアフリー基準を満たしていません。そして、そのような建物の住民の多くが高齢になっており、生活のし辛さが問題になってきます。
築44年のKマンションにおいても、この問題が顕在化していました。
これは、住みやすいマンションにするため、解決に向けたバリアフリー工事を実地した事例になります。
マンションの課題
Kマンションは昭和54年竣工、7階建てでエレベーター付きです。 142世帯中、住民の高齢化により80歳以上の方が51名、障害をお持ちの方や電動車いす 使用者が複数名おり、日常的に車いすや歩行器、買い物カートなどを使用している方が多くいます。
この様ななか、マンションの元理事長である本郷様が発起人となり住民の方も多数参加される “住み良いマンションづくり委員会”が組織され、下記の4点が課題として上がりました。
- ごみ収集場所へ行く際に階段があり、歩行困難者はごみ捨てが難しい。
- エレベーターホールに段差があり、電動車いすや買い物カートの乗り越えが難しい。
- エレベーターの点検中や停電時に使用することになる屋内階段に手すりが無く昇降が大変。
- 災害等のエレベーター停止時に高層階に住む車いすの方の避難経路確保の必要がある。
【実際の場所と課題のイメージ】
マンションの一般的な課題としては老朽化に伴う耐震性強化や動きの悪くなってきたサッシ類の交換が上げられる一方、これらは住民にとって喫緊の課題であることから、Kマンションではより住みやすいマンションにするため、解決に向けたバリアフリー工事を実地することとなりました。
アビリティーズはこれらの課題に対し、一級建築士を中心に福祉機器を交えた体制で、設計 や助成金制度の調査、申請の補助を含め一貫したトータルコーディネートを行いました。
歩行困難者でもごみ捨てを安全に行える環境に
日本の気候は高温多湿なため、多くのマンションの1階は地面から高い位置に設定されています。Kマンションでも、1階の床が高くゴミ収集場所へ行く際に階段を昇降する必要がありました。 ご入居者の中には重たいゴミ袋を持つため台車を利用してゴミ出しをしていましたが、数段の階段がバリアとなっていました。
また、歩行困難者でなくても転倒の危険性があり、階段昇降の難しい電動車いすの方は他の方にゴミ出しを頼んでいました。
階段の段差解消の検討において階段横の空き地の活用が候補に上がりました。
写真は、スロープ施工前の階段横の空き地。
安全な勾配のスロープが確保できる長さがあり、スロープ工事を実施することとなりました。
【スロープの図面】
空き地にはマンホールが3ヶ所あることが問題となりましたが、スロープ上面まで穴を伸ばし対応しています。
施工後は、台車に載せて重たいゴミも運ぶことが出来るようになったことで住民の方から利用しやすくなったとの声をいただき、電動車いすの方だけでなくすべての方が利用しやすいユニバーサルデザインになりました。
電動車いすでも安全に外出ができるよう組立て式スロープブロックビルドで解決
各階のエレベーターホールと共有廊下には7~8㎝の段差があり、電動車いすや歩行器の乗り上げが困難でした。特に電動車いすの方は段差を乗り越えるため、一度電動車いすから降車する必要があり、介助者なしでは外出ができませんでした。
当初はエレベーターホール中ほどまで掛かるスロープの大規模工事を検討しておりましたが次の問題点から断念していました。
- 防火扉がスロープ上にくる為、扉を閉めた際に隙間が出来てしまう点
- 車いす用エレベーターから降りてすぐに段差が発生し危険な点
- 廊下幅が足りずスロープが急になり電動車いすの転倒防止バーが引っ掛かる点
ブロックビルドでは廊下長手方向側のスペースを大きくとり傾斜を緩やかにすることで問題を解決し、一般的なスロープ工事と比べて価格を抑えることができます。今後、劣化や破損があったとしても、その箇所のパーツを取り換えるだけでメンテナンスが済む点も評価いただき採用となりました。
【玄関との隙間に端材を詰めたブロックビルド】
【段差の誤差に対応できるブロックビルドのパーツ】
ブロックビルドの形状は施工後の掃除を考慮し穴なしタイルを使用しました。
廊下の床に穴をあけ固定ができないため、スロープ自体が横滑りしないよう、玄関との隙間 にブロックビルドの端材を詰め込み固定しています。各階段差の誤差はパーツを組み合わせることで全ての形状に沿ったバリアフリー化を実現しました。
ブロックビルドの出入口にかかる住戸の方からは、玄関と廊下がフラットになり使い勝手 が変わる点や雨が流れてくる心配もありました。ですが実際は使い勝手に問題なく玄関と の間に数センチの隙間を設けることで、雨水の侵入も発生しませんでした。
施工前は段差部分でベビーカーや買い物カート等を持ち上げる必要がありましたが、施工 後はスムーズにエレベーターホール⇔共有廊下を移動できるユニバーサルデザインになりました。電動車いす使用者の方も、降車せずとも安全にお一人での外出が可能となりました。
- ブロックビルドの設置図はこちらよりダウンロードできます。→ ブロックビルドの設置図面
- ブロックビルドの商品詳細は下記より↓
停電や緊急時でも住民全員が安全に避難できる環境に
地震などの災害時には停電などが発生する恐れがあります。Kマンションでは以前停電の際に屋内階段に手すりがついておらず、昇降が大変だったと住民からの声がありました。 階段を安全に昇降が行えるよう1階~7階まで手すりを設置しました。
川崎市助成制度の活用を提案し、手すりの価格を約3分の2まで抑えることができました。
・川崎市マンション段差解消工事等費用助成制度のご案内
【 助成金の金額 】
工事費用(消費税を含まない)の1/3(千円未満は切り捨て)を助成します。ただし、住戸数に1万円を乗じた額を限度とします。(例)工事費用150万円、住戸数30戸の場合、助成金の額は30万円となります。
手すりと同様に、高層階に住む車いす使用者の避難経路確保も課題として上がりました。
キャリダンは緊急時でもバッテリー切れを起こさず、歩行困難者の方を安全に避難させることが出来るため採用されました。収納がコンパクトなため、住民がわかりやすい位置に保管することができます。
下はキャリダンの収納時の様子を動画でご覧いただけます。
階段昇降車の商品詳細は下記より↓
バリアフリー工事後の住民の様子
Kマンションは今回のバリアフリー工事を行ったことで、バリアを感じていた様々な住民の方が暮らしやすいユニバーサルなマンションになりました。工事後の様子をKマンション、本郷元理事長にインタビューしました。
【 本郷元理事長からのコメント 】
マンション全体がバリアフリーになったことで、歩行が困難な方やそれ以外の方も利用しやすくなったと声が届いています。住民の高齢化で車いすでデイサービスに通われている方も多いので、エレベーターホールの段差解消は特に好評です。
助成金もアビリティーズさんの営業担当の方が提案から申請までしてくださりスムーズに工事へ進めることができました。工事期間も短く、住民の皆さんにあまり迷惑をかけずにバリアフリー化ができたので良かったです。
関連情報(バリアフリー関連法と助成金)
*本⽂書に記載している情報は、発表⽇時点のものです。
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