【介護付老人ホーム 気まま館 柏】
高齢者の福祉プログラムは、制度面では長い間、施設サービス中心であった。本格的な在宅福祉サービスは、 平成12年の介護保険制度が開始されてからだ。それ以前もなかったわけではないが、自治体により大きな格差があったし、必要なサービスの種類と量はニーズ に程遠かった。1972(昭和47)年から、福祉機器の開発・販売の事業に取り組んできたアビリティーズだが、高齢者や障害のある人が、住みなれた街に住み続けられるために、福祉施設を開設することを決めた。いまだ不十分ではあるが、在宅サービスが本格的に国の制度に位置づけられた意義は大きい。
気まま館第一号の開設
1999年、東京・府中市に高齢者や障害者用の住宅を開設することになった。翌年から介護保険制度が開始されることが決まり、制度の詳細が次第に明らかになるにつれて、アビリティーズのそれまでのビジネスモデルでは、今後は厳しい状況になるだろうことが予想された。複合的なサービスが必要と思われた。
新たな経営戦略として、住宅は重要な柱になると予測できた。すでに高齢者住宅といわれる住居施設を運営するところも多く、見学させていただいたこともあった。しかし高齢者の住居としては当時、特養ホーム、養護老人ホームなど社会福祉事業法でいう入居施設があった。民間施設としては「有料老人ホーム」だけであった。社会のニーズは次第に多様化していた。
アビリティーズは、高齢者も含め心身に障害のある人を対象に、自宅や普通の賃貸住宅では生活しにくい人、見守りや生活援助、介助、介護を要する人たちが、できるだけ自立した生活を可能にする環境と医療、人的体制を整えた住居をめざして、この計画を進めることにした。
建設は、これまでアビリティーズがたくさんの障害者の住宅改修、時には新築住宅設計、工事管理などの数か月を掛けてオープンした施設は「ブルーベリーコート府中」と命名した。地主さんが隣地に広いブルーベリー畑を持ち、毎年たくさん出荷していたことからであった。コンサルタント業務をやってきた「アビリティーズ一級建築士事務所」のノウハウを駆使した。
アビリティーズの住宅事業は考えながら始まったが、第二号の計画に入る頃には、コンセプトはより明確になってきた。高齢者住宅に関する国の制度や運営の方針について、変化もしていた。
アビリティーズの住宅は、「気まま館」の名称とし、統一の理念で運営をしていくことになった。
気まま館とは、ご入居されるそれぞれの方が、ご自分の暮らし方、生活の仕方を大事にして、ご自分のペースで元気に楽しく続けられるように、との願いを込めたものである。もちろん、一軒の家にたくさんの方がお住まいなので、共同で生活する部分もある。お互いにそれぞれが尊重する関係を保つことが求められる。
気まま館での生活においてはご入居者への医療的なサポートを最初から大事に考えてきた。そこで、第一号のブルーベリーコート府中の開設にあわせて、武蔵野市吉祥寺に、医療法人東京萌気会を設立、「吉祥寺本町クリニック」を開設した。理事長・院長には武蔵野赤十字病院の副院長として活躍されてきた、司馬正邦先生になっていただき、外来・デイケア・訪問リハビリ、それに訪問診療を開始し、気まま館のご入居者の健康管理をお願いすることにした。看取りも行なうことを前提に開設した。
施設サービスの拡張
不動産物件の話が持ち込まれるようになった。しかし、慎重に取り組んでいる。勝手ではあるが、地主さんがアビリティーズの考えをご理解くださるかどうか、それが大事な決定条件でもある。この事業は20年、30年という長い共同の取り組みとなる。単に金儲けしか考えていない方とは仕事をしない。良い人柄の方と良い仕事を、地域のお役に立つ事業を長く一緒にしたい。いつもその想いをもって取り組んできた。
アビリティーズの施設サービス事業は、NPO法人日本アビリティーズ協会、アビリティーズ・ケアネット(株)、医療法人東京萌気会のグループ3法人が役割分担して進めている。
第一号の創設以来12年間で、施設サービス事業は気まま館5ヶ所、デイサービス13ヶ所、クリニック1ヶ所、デイケア1ヶ所、生活リハビリセンター1ヶ所、コミュニティホール4ヶ所、子どもの才能を育むアビリティーズカレッジ1ヶ所、また武蔵野市から吉祥寺本町在宅介護支援センターの運営受託、同じく同市のテンミリオンハウス「月見路」の運営委託など拡大している。エリアは東京、神奈川、千葉、埼玉、それに大阪府和泉市である。
東京・府中市に開設した「生活リハビリセンター」は、疾病、障害のある方に、体力や機能の維持向上を図ること、より自立して生活ができるよう生活環境の改善・整備、社会参加の促進、介護負担の軽減などをめざし、在宅での自立的な生活をサポートすることを目的として生活リハビリを提供している。
この施設サービスは、現在 テーマ「地域ケア 」に拡張している。
現在の施設サービス